『歌う人のためのはじめての解剖学』読者レビュー

生涯大切にしたい座右の書
本を開くと、解剖図の美しさと川井先生の声楽家の視点による的確な解説に魅了されました。どこからでも読み始めることができるのもよく、読んでいるうちに身体の力みが抜けてきて楽になるのが不思議です。「こうすればよい声が出る」と決定論を提示する内容ではなく、「個々が本来持っている身体のしなやかさを受け入れ、まかせて」歌うヒントが満載されていて、読む度に新しい発見があり、迷路に入り込んだ時も「自分の声で歌う」原点に自ら気付けるように導いてくれる、本当に素晴らしい本です。生涯大切にしたい座右の書となりました。歌に関わるすべての方々にこの本をお薦めします。(2023.08.07.足立幸恵_合唱愛好家)

一見わかりやすいHow-Toでは、ほんとうに歌がうまくなるものではない
『歌う人のためのはじめての解剖学』をパラパラとめくると、まず目に飛び込んでくるのが、解剖イラストだ。これが、なんともすばらしい。立体感があり、リアルな感じなのに気味の悪さはなく、わかりやすい。この本では、医学、解剖学の専門家ではない声楽家、声楽指導者である著者が、やはり医学や解剖学とは、およそ縁のなさそうな歌う人達に向けて、解剖学をわかりやすく解説している。しかも、内容は、かなり本格的だ。(なにせ、順天堂大学の坂井建雄氏の監修である)

それにしても、なぜ、歌う人のための解剖学なのか?

著者は、はじめににおいて、「知識が歌うことを手助けするように。」と記している。
記述は、高校生の生徒と著者のレッスン時の対話を皮切りに、ヒトのからだに関する詳細な解説へと続く。そして、最後のChapter8歌うための覚書では、「あなたはここまでに、多くのことを知ったでしょう。(中略)歌うときに大切なのは、これらの情報から一旦離れることです。」と述べる。

迷える歌い手は、この一文を読んで、はてな?と思うかもしれない。ここまで、読者は自分自身のからだのことでありながら、聞いたこと、想像したこともなかった人体のしくみを知って、驚いたり、感動したりしてきた。歌うときに、どのように解剖学を活かすことができるかと、ワクワクしているのに、ここから離れろとは?!

いや、著者がいうのは、あくまでも「一旦離れる」ことなのだ。それに気づくとき、はじめにの「知識が歌うことを手助けするように。」という言葉と、この歌うための覚書で著者が言わんとすることが、読み手のなかでつながり、歌う人を手助けしてくれる知識の環ができあがる。

また、著者は、おわりにで、「今、私は、「歌うには“縦糸”と”横糸”がある」と明言したいのです。」という。

一般的な声楽レッスンで教えられる「フレーズをどう歌うか」といったいわゆる歌唱法を“横糸”、「声と自分のからだとの関係や、連動すべきはずのからだのあるつながり」を“縦糸”にたとえ、“横糸”ばかりのレッスンでは、“縦糸”に問題がある生徒は行き詰まることが多いと述べる。そうして生徒が行き詰ったときに、たいていの教師が発する注意は、「横隔膜を使って」「しっかりささえて」「ノドをあけて」など、声楽レッスンを受けたことがある者には、おなじみの言葉だ。
これらの注意を、著者は“斜めの糸”にたとえ、「“縦糸”と“斜めの糸”の理解に解剖学が役立つでしょう。」と説く。「理解して“斜めの糸”を手放し、“しなやかに”歌うことで、“縦糸”は強くなり、変幻自在に音楽できるようになるでしょう。」と。
もちろん、変幻自在に音楽できるところに至るまでの道程は、果てしなく長く、そして険しいだろう。著者は、昨今、流行りの、ああすればOK、こうすればうまくいくというような、一見わかりやすいHow-Toでは、ほんとうに歌がうまくなるものではないことも示唆している。
「歌うことはからだに負担をかけるのではなく、歌うことでより健康になり、音楽活動以外にも日常生活が充実するのです。」
そうありたいものだと、心から思う。
(2023.08.06 林 幸子_声楽愛好家)

この本はプロアマ問わず、歌うことに関わる全ての人にとっての発声についての疑問に、解剖学的な観点からヒントを与えてくれるものです。
この本を開いてまず驚いたのは解剖イラストです。発声について書かれた書籍はいくつもありますが、見たことのない角度からのこれらのイラストは、いままでぼんやりとしか認識できていなかった歌うための身体の仕組みについて、よりはっきりと具体的に捉えさせてくれます。目に飛び込んでくるイラストと、興味をそそられる表題、見開きで完結する分量で、解剖学という難しそうなイメージを難なく飛び越えて読み進めることができます。例えば肺の周りの筋肉や骨、横隔膜など、場所や形、動きについて、なんとなくわかっていたつもりでいたものが、実は思っていたものと少しずれていると気が付きました。また肩の骨や腕の項目では、この部分が声と密接に関係があることを初めて知り、これまで漠然と歌っていて、身体について知らないことのなんと多いことかと驚きました。歌うということは身体全体が細部にわたって繋がり動いているということがこの本を通してよくわかります。合唱団等で声や体のことを説明することがありますが、これまで自分の中であいまいだったことをより明確にして伝えることができるようになりました。

また、“歌うからだ”というものが思っているよりも繊細だということも理解が進みました。声を出すことはアクティブでエネルギッシュだけれど、その裏側には身体のあらゆる器官の繊細なつながりや動きがあること、人の演奏を聴いて、なんとなく聴いているこちらが苦しくなり窮屈に感じる理由が、理にかなっていないバランスの良くない声によるものであること、歌い手が身体の繊細さを感じることを放棄した演奏をしていること(あるいは指導者によってさせられてしまうこと)、それが聴く側を苦しくさせることに気が付くことができたことは大きな収穫です。歌うことや身体のことについて、ぼんやりとしていた認識が、だんだんピントが合ってくる、この本はそんな1冊だと思います。
自分の歌はコロナ以来すっかり埋もれてしまっていますが、この本の解剖イラストのように自分を見る角度を少し変えればまた歌う足がかりになるのかもしれないと、勇気をもらえたような気がしています。
(2023.08.09 栃木篤子_東京芸大卒・合唱指導者)

Noteとメールより   2023.08.01

●レッスン中に実践で教えていただいた筋肉の説明が文章になっていることは、とてもありがたいことです。これまで一冊目と二冊目の本の中である程度見慣れていたイラストをみると、なぜだかほっとしました。

●じっくり読んでいくつもりだったのですが、気がつくと一気に読み通してしまいました。あちこちに(さらりと)深く、重要なことが書かれているので、(マーカーを持って)また読み直していこうと思います。
解剖学の内容に加え運動学の内容も入っていたので分かり易かったです。また、歌う時の感覚や指示も載っているので、感覚を解剖学に結びつけ易いと思います。でも解剖学の内容は一般の人には詳し過ぎるかも? 素敵な書籍をありがとうございました!新しい気付きや再認識できたことがたくさんありました!

●難しい内容が分かりやすく丁寧に書かれていて、だけどボリュームがある。 1冊目の本を初めて読んだときも思いましたが、歌うことって奥深いことなんですね。 川井先生の本を読んでいると、歌や合唱に対する神話のようなものやそれにまつわる謎めいた指導を受けすぎて、疑問にすら思わなくなっていた数々のことに気づき、それらを手放すきっかけを与えてくれます。しっかり読んで日々の学びにつなげたいです。

●これまで以上に解剖図がたくさん、しかも大きく、詳しくてわかりやすいです!

●期待や想像を超えた、これまで実に知りたかったことの連続に「うわっ」とときめきました。

●テンション上がってパラパラっと開いたらなんと魅力的な見出しばかりなんでしょう!

●早速先生の「はじめに」のところに書かれていた通りいくつか気になったページから読ませていただいたところ、知りたかったことがあふれんばかりに、でも言葉は多すぎず、程よい加減で書かれていました。 たとえは良くないかも知れませんが、分厚い名曲200選歌集よりもお気に入りの80曲自選歌集のように、どこを開いても目がキラキラする感じです。今までの2冊とはまた違った辞書のようでもあり、親切な解説本に更に講義内容を書き加えたような、歌う私たちの必須アイテムですね! 本当に素晴らしいです!コロナで直接のレッスンが受けられないけれど、リモートレッスンや講座にこの本が加わればちょっと安心です。自習も頑張れそうです。ありがとうございます! ・画期的な本の出版おめでとうございます。すごいエネルギー使われたことが伝わってきます。

●まず、イラストの美しさに目を奪われました。 頭蓋骨は下からこう見えるのか!ゆっくり読んでいきたいと思います。

●少し読み始めて引き込まれ、ページをめくる手が止まらなくなりました。 とても詳細で、専門用語もたくさん使われているのに、わかりやすい。 図も美しく、見たことのない深部や細部までとてもよく把握できます。 そして、すべてが歌う人へ目から鱗が落ちるヒントにつながっているのが嬉しいです。
肺を輪切りにして上から見た図では、改めて驚きました。 肺は、正面からの平面図では想像できない形でしたから…
先生、歌う私たちのためにこのようなご本を書いてくださり本当に有難うございます!大切に大切に読ませていただき、歌い続けていきたいと思っています。

●私は川井先生の文章が大好きです。本をパラパラと見た印象は、医学書みたい!(医学書知らないけど)。学生時代、苦手な生物は集中して授業を受けられませんでした(なんか内臓のこととか考えると脱力してしまう…)。 そんな私が「やっぱり体のことを知らないとね」と思うようになるなんて! 自分にビックリです。
歌う人の立場から、パーツ毎にこんなに丁寧に説明してくださった川井先生のご努力に感服しています。そしてそのベースには坂井先生をはじめとして大勢のお医者様方の膨大な研究が有るのだと感謝の気持ちでいっぱいです。
私が歌う時には、私の体の各部分が仲良く協力してくれるように、川井先生のご本を読んで解剖学を役立てたいです。

●頷くこと、そうか~と納得すること、まずは最後まで一気に目を通しました。救いを与えてくれそうな言葉がいっぱい。「この注意の弊害は・・・」など、使用前使用後の記述がありがたいです。「知った上でこの情報から一旦はなれること」など、まるで道標のようです。

●御本を最初から読みはじめようとしましたが、他の項目も次々と気になり、これは辞書辞典だ、その時々に必要な項目を何度も読み返していいのだと思い返して、あちこち飛びながら拝見しています。その際に、詳細な目次が索引代わりにもなるように配されているのが、とても助かります。感覚や印象だけで終わらない、身体の内部からのご説明は、極めて頼もしい道しるべです。

●魅力的な見出しばかりでどこから読もうかと悩んでしまいます。そして解剖図がきれいで見やすいこと!

●パラパラとめくってみただけですが、絵も大きくて見やすく理解が進みそうでワクワクしました。自分の感覚と照らし合わせながら読み進めたいと思います。

●知りたい事が見出しになっていて、痒いところに手が届く感じでワクワクしています。歌うチャンスが無く、練習パワーがダウンしたままの毎日ですが、この本でまた気持ちが歌に向かいそうです‼️じっくり読みながら、練習再開します。

●2冊目とも違いますが美しい解剖図で息を呑みます。
横隔膜も大胸筋も人間の作られ方の美しさは、見事です。
「歌うための覚書」も私達へのエールが沢山です。また、少しずつ進めるように思います。この本を傍らに置いて…

●パラパラと開いてみたら、難しそう…と思いきや、同時に、歌うにも教えるにも大切なことが満載で、止められなくなりました♪